【掌編】

□【掌編】十七話
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 その日から、あたしはデイジーにまとわりつくようになった。
 吸血鬼というより、まるで背後霊みたいにね。

 デイジーはいつも素っ気なかったけれど、けして拒絶はしなかったし、あたしがしつこく寄っていったら根負けしたのかしら――ある程度は親しく口を利いてくれるようになった。
 あたしが強制したので、こちらを『みっちゃん』と呼んでくれるようになったし。基本的には、ひとの言うことには唯々諾々と従うような娘だった。でもルールは守るけれど首輪をつけることはできない。自由で、いちばん奥までは踏みこませてくれなかった。

 心をゆるしてくれたわけじゃない、のだろうけれど。
 季節は流れ、冬になった。

 あたしは飽きもせずにデイジーに寄っていき、彼女は受け身で、だからこそ不安で――ずうっと絡みついていないと、どこかに消えていってしまいそうだった。
 そんな彼女だったけれど、いちどだけ――あたしに相談をしてくれたことがある。

 ほんとに困ってたのだろう。
 あるいは、単なる気まぐれだったのだろうか。

 彼女はどうやら妹の誕生日にプレゼントを選んであげたいみたいだった。でも、ふつうの女の子がどういうものを喜ぶかわからなくて困っていたのだ。まぁ、あたしもべつに一般的な感性を持ちあわせているとは言いがたいけど(常識人だったらそもそも、デイジーに関わらないわよ)嬉しくて光栄で、二つ返事で引き受けたのだった。
 学校帰りに、ふたりで町を歩いた。
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