【掌編】
□【掌編】十七話
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お買い物をするときに地元民がよく利用する、ちいさな商店街だった。
もうじきクリスマスだからか電飾があちこちで輝き、ちいさな雪のつぶがちらほらと、傘は必要がない程度に舞い踊っていた。人混みのなか、すぐにふらふらといなくなるデイジーを見失わないように、はぐれないように手を繋いで。
彼女はいつでも脱力していて、握る手のひらもだらりと垂れさがっているだけで――だからこそ、あたしは二倍ぎゅってちからをこめた。
過保護な親とチャラ男にもこもこに防寒させられ、服の重みにぐったりしていたあたしの横で、デイジーは見るからに寒そうな制服姿だった。
暑さ寒さをあんまり感じないのか、鈍感なだけなのだろうか。
でも、鼻の頭がほんのり赤くなっている――冷えていないわけではないのだ。
彼女も人間である。
「ねぇ、みっちゃん」
デイジーはふと、まだ耳に慣れないあたしの愛称を口にして。
「寒いの? さっきから、すごく震えてるよ?」
「こっちの台詞なんだけど――あんた、そんな格好じゃ風邪ひくわよ?」
「ん〜、さっき缶珈琲飲んだからだいじょうぶ」
なんて会話しながら、のんびりウインドウショッピング。ちなみに商店街のなかには車は入ってこれないので、チャラ男はそのすぐそばに置いてきた。まぁ、あの男は運転さえできれば幸せな安い人種なので、そんな扱いにも不満はなさそうだったけど。