【掌編】
□【掌編】十七話
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「『だいじょうぶ』なわけないでしょ、あんた自分のことは何でも後回しにしちゃう悪い癖があるわよ――マフラーでも買えば?」
「マフラーってその、みっちゃんが首に巻いてるやつだよね? あったかいの?」
たまに、驚くほど無知なデイジーである。
「それなりにね――ほら、どう?」
長いマフラーだったので、デイジーにもすこしお裾分けしてあげる。ふたりの首に、彼岸花色のあったかさが巻きついた。デイジーは何だか服を着せられた猫のような、居心地の悪そうな顔をしたけれど。
「ん〜」
動きにくそうにしながら、素手を、あたしの手袋のなかにつっこんで。
「こっちのが、あったかいよ」
その、彼女の冷たい指先の感覚に、ぞくぞくきて。いつもは淡泊な彼女の、その甘えるような態度が――たまんなくって。
「で、で、デイジーっ!」
「んぎゃ!? 何すんだてめーっ!?」
思わず抱きついたら、乱暴に「べし、ばし」と顔面を打擲された。フフフ、でもマフラーでお互いを拘束してるから逃げられないのよ、なんて満足げに頬ずりしてあげて。
あたしはもう、すっかりデイジーに夢中になっちゃってるんだな、と思った。
学校にお友達なんていない。家庭にも居場所がない。ほんとうの自分を晒けだせる、決してあたしを拒絶しない彼女のことを――便利に利用している、依存している。でも、それを友情と呼びたかった。