【掌編】

□【掌編】十七話
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「妹さん、いくつなの?」

「小学生だけど」

「小学生に化粧品や下着って――もっとこう、おもちゃとかのほうが良いんじゃない?」

「どうせ不自由なんだから、身体や心ぐらいは好きに飾らせてあげたいんだけど。おもちゃか、そうだね……。あの子、あたしのおさがりのボロボロのお人形とかで遊んでるし。新しいのを、何かあげたほうがいいのかもしれない」

「あれとか、流行ってるみたいだけど」

 たまたま目についたので、近くにあったゲーム屋さんを指さしてみる。卵形の、ちいさな携帯ゲームだ。よく知らないけど、何か架空の生き物を育成するゲームらしい。うちの中学校とかでも、こっそり持ってる子がいて、授業中にもピーピー鳴るので禁止されてたような――。
 こういう流行というものはよくわからんもので、あたしには何が面白いのかさっぱりだけど――『緊急入荷! 売り切れ次第終了! 残り三個!』とか拡声器で叫んでる売り子さんを見ると、売れてるんでしょうね。

「妹は、何かを育てるのは好きそうだけど。たまに、庭の植木鉢とかに嬉しそうにお水あげてるし。でも、どうせならデジタルよりほんとの動物をあげたいな。あたしは妹を守り育てることで心を保ってる。だから、まりりんにもそういうものをあげれば――どんなにつらいことがあっても、生きていけるかもしれない」

「じゃ、ペットショップね」

 意味がわからんことを真面目に語っているデイジーに、あたしは短絡的にそう提案した。デイジーはほんと、会話をする気がないんじゃないかと思うぐらい、たまに理解不能なことを言うわよね。
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