【掌編】
□【掌編】十七話
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「亡々宮お姉さん、こんなところで何をしているんですか?」
相変わらず馬鹿丁寧な口調で問われたが、う〜む――説明が難しいわね。
「姉に用ですか?」
「いや、今日――ってか最近、よくデイジー学校休むから、心配で……」
しどろもどろに言うと、鞠和ちゃんは「はあ」とこれ見よがしに溜息をついて。
「深入りしないほうがいいと、忠告をしたつもりだったんですけどね。子供の意見と馬鹿にせず、きちんと聞いていただきたいものですが。……まぁ、いいでしょう」
なぜか一瞬、これもデイジーにもらったのだろうやけに武骨な腕時計に視線を向けて。
「もう終わったころでしょうし、お見舞いぐらいならどうぞ――お姉ちゃんも、亡々宮お姉さんに会えるのは嬉しいでしょうから」
『もう終わった』って、何が?
聞きたかったけれど。
疑問を口にする前に、鞠和ちゃんはつるつると滑りながら屋敷の正門へと向かっていく。あたしは、ついていくしかなかった――。
観光名所のような大門をくぐり、広々とした庭へ。
相変わらず荒廃している。地面には大量の車のタイヤの跡。吸い殻などのごみ。何かの祭のあとみたいだ、はっきりと異臭もする。何かを燃やしたみたいな……。それも、変な麻薬とかそういう、脳にくらくらくるようなものを。
敷地面積だけなら、球技大会とか開けそうなぐらいだ。ずいぶん奥に、木製平屋造りの屋敷が鎮座している。これまた立派な、けれど朽ち果てている、戦国時代から発見されずに放置されてた建物みたいだ。