【掌編】
□【掌編】十七話
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「羨ましいかぎりね」
「まぁ、いつかは終わる関係ですが――ほんのすこし、他人と仲良くするぐらい、あたしにも赦されると思いますので」
何でそう、あんたたちはネガティブというかすぐ『終わる』だの何だのと……。
鞠和ちゃんは、途方に暮れたように。
「ほんとは、いけないんです――こういうの、幸せっぽいことは。あたしが笑顔になるぶん、お姉ちゃんが痛みに耐えなくちゃいけないから」
その、思わず零れた弱音のようなものを。
遮るみたいに、唐突に。
「おう、鞠和さん――今日はずいぶん遅いお帰りですね」
声がかけられた。
気がつくと屋敷の入口前まで辿りついていて、これまた防犯上ちょっと問題がありそうなぼろぼろの扉の前に、見覚えのある青年が座っていた。こないだデイジーのお見舞いをしたときにも会った、鷹丸、と呼ばれていたやつだ。
相変わらず黒ずくめで、サングラスまでかけている。
彼は暇そうに携帯ゲーム機をいじくっていたが、その独特な猫っ毛を揺らしながら顔をあげ、そして驚いたようにあたしを見た。
「おや、お客さんもいっしょか――デイジーさんのお見舞いか何かっすか? どうぞどうぞ、もう家んなか入っても問題ないと思いますから」
「お姉ちゃんの様子はどう?」
鞠和ちゃんが、あたしたちに対するときとは明確に異なる、冷たい、触れれば切れそうな無感情な声で問うと。