【掌編】
□【掌編】十七話
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「ま、いつもどうりですよ――おっと」
玄関扉が奥から開き、これも見覚えのある禿頭の巨漢が顔をだした。こっちはたしか、寿、といっただろうか。鷹丸に寿。妙におめでたい名前だ、偽名とかだったりして。
「だいじょうぶだよコトちゃん、ただのお客さん――」
「…………」
鷹丸の言葉に、寿は相変わらず無言で頷く。扉を閉めてでてくると、仁王立ち。てこでも動かぬ、入りたければ我を倒すがいい、って感じなんだけど。どうも歓迎されていない。
しかしこの二人、いったい玄関で何してるんだろ。門番、とかだろう――こんな盗むもの何もなさそうなボロ屋敷で?
「どうぞお姉さん、こちらです」
不気味な二人組に怯んでいると、鞠和ちゃんがあたしの制服を引っぱってくる。そのまま、玄関扉の横を素通りし、狭い通路へ。どんどん奥へ――。
「あそこの正面入口は、ふだん、あたしたちは使えないんです」
「ど、どういうこと? ここ、あんたたちの家でしょ?」
「そういう決まりなんです」
逃げるように急いで移動する鞠和ちゃんに、あたしは戸惑いながらも、じっとこちらを見据える鷹丸と寿が怖くて渋々とついていく。あの二人を突破して無理に押しいる理由もないし、腕力もないし。
まぁ、いかにも旧家、って感じだし――いろいろ、面倒くさいしがらみがあるのかしら。我が家だってそうだし、と深くは考えなかったけど。