【掌編】

□【掌編】十七話
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 玄関にローラースケートを立てかけて、土汚れのついた靴下を脱ぐと、鞠和ちゃんは裸足のまま玄関にあがる。使い古された靴入れ。飴色になったぼろぼろのビニール傘。妙に小綺麗な、たぶんデイジーから鞠和ちゃんへのプレゼントなのだろう、この景色では浮いて見えるぴかぴかの靴がいくつかと、空き缶にいけられた野花。

 室内は薄暗く、いくつものちいさな部屋が連続している構造のようで、奥までは見通せない。
 玄関脇の扉から、水音がした。

 扉が開き、そこからデイジーが姿を見せた。お風呂上がりなのか、身体中に水滴がついていて、タオルで髪の毛を拭っている。少年的な、ほそっこい身体。あばら骨までくっきり浮いている。あちこちに、傷ましい疵痕。

「お帰り、まりりん――っと?」

「お邪魔するわよ」

 いきなり鉢合わせするとは思わず面食らいながらも、あたしは無駄に偉そうに言ってしまった。すごい心配したのよお見舞いしにきたのよ体調はどうなの何か病気なの――なんて、質問したいことばかりが頭を巡って、ひとつも舌にのらないまま。

「……みっちゃん?」

 デイジーは怪訝そうにして、女同士だからべつに恥じることもなく、やけに男らしくタオルをすぱぁんと背中に打ちつけて。

「どうしたの?」

 いつものように、淡々と問うてきた。
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