【掌編】
□【掌編】十七話
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「みっちゃんはさ……」
デイジーは何かを言いかけてから、それも無粋と思ったのか、そっと背中に手を回して抱きかえしてくれた。噛みしめるように、匂いを嗅ぐように顔を動かして。
吐息を漏らした。
「あったかいね」
無力な中学生だったあたしは、何だか物珍しそうにそう言う彼女を、ただ抱擁することしかできなかった。何ですべてが失われてから、後悔してばかりなのだろう。ほんのいっときの痛みを恐れて、致命的な失敗をしてしまうのだろう。
何であたしは最後まで、デイジーの手をひいて逃げることすらしなかったのだろう。
× × ×