【掌編】
□【掌編】十七話
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そして、時系列は現代に戻る。
夏、真っ盛りだった。
その日、あたしら修学旅行のグループ――つまり、あたし亡々宮美血留。憂奈木デイジー。そして王路史乃に、矢賀潮と緋旅暦子の五人は、何の因果か集まっていた。お友達みたいに、一緒に遊んでいたのだ。
修学旅行は夏にあるので、海遊びが中心になるみたいだし――泳げないのもあれだし、あたしも日差しに慣れている必要があった。ついでに水着の見せあいっこもしよう、修学旅行の予行練習だよ〜、などと王路さんにいつもの強引さで押し切られたのだけど。
腹の立つことにその言いだしっぺ本人がいつまで待てど姿を見せずに、この学校でいま使われている屋上プールへ。ちなみに、彼女に預かっていた(どういう入手経路なのか聞くのが怖い)出入り口の鍵で開けたんだけど。
夏休みの夕方で、昼間は水泳部やらが練習に使っていたみたい。放りっぱなしのビート板や、誰かが忘れたぐしょぐしょの巻きタオル。もう五時なのに元気に太陽が天に居座っていて、肌を炙ってくる。
あたしは冗談ではなく真夏の砂浜にいきなりでたら卒倒するような虚弱さなので、この程度の日差しから鳴らしていくのは悪いことではない気がした。
ともあれ。
いつも元気よく周囲をかき回す王路さんが不在なため、あたしたちはあまり会話もなく。
意外と運動神経がよくかなり泳げるデイジーに、あたしと例の二人組――矢賀さんと緋旅さんがそれとなく息継ぎの仕方から教えてもらってるかたちになる。