【掌編】

□【掌編】十七話
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 デイジーの教えかたはわりとハードで「水中で泳げないと、死ぬよ。死ぬのはよくないことだよ――」とか意味のわからんこと言いながらあたしたちを厳しく鍛えあげた。お陰で、ぐったりしてしまい、どうも壁に背中を預けて休んでいたら居眠りしてたみたい。

 というか、走馬燈だったのだろうか――むかしのことを思いだしたりしていた。

「亡々宮さん、だいじょうぶ?」

 肩を揺さぶられて、おおう、とあたしは我を取り戻す。
 目を開くと、こちらを心配そうに緋旅さんが見下ろしていた。しゃがみこみ、その立派なお胸を強調するような艶めかしいポーズ。着ているのは野暮ったい学校指定のスクール水着だけど、それが逆にいかがわしい。同い年、中学生には見えないわね。

 いつも地味というか独活の大木というか、自己主張しない娘だけど――実はけっこうな美人さんだと、最近気づいた。もっと堂々としてりゃあ、さぞモテるだろうに。
 彼女は心配そうに、あたしのおでこと首周りに濡れタオルを当ててくれながら。

「こんなとこで寝とったら、脱水症状になんで?」

 関西弁で言いつつ、クーラーボックスから冷えたお水を取りだして手渡してくれる。世話焼きで、優しい子だなあ。両手首に防水の腕時計をぐるぐる巻きつけてるのが異様だけど、何の意味があるのかしらこれ――宗教上の理由?
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