【掌編】
□【掌編】十七話
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「んむ……」
窓際の席で、デイジーは気持ちよさそうにごろにゃんと寝入っている。猫ちゃんみたいで、かあいいなぁ――あたしは、無性に撫で撫でしたくなったけれど。
ぶんぶんと首をふって、不埒な妄想を散らした。
そういう趣味はないのだ、決して。あくまで、この当時は。
あたしは可愛らしいものを偏執的に愛しているけれど、この子はどっちかというと中性的で、そういうのとはちがっていて――ただ、自然のままにのびのびと生きているようなその姿が、鎖でがんじがらめみたいにぎこちなく生きてるあたしには、羨ましいだけだったのかもね。
「むう――」
制服姿で机で、という環境では寝苦しいのか、変な夢でも見ているらしくデイジーは苦しげに呻く。教師も、最初はもちろんそんなふうな彼女を注意してたりしたんだけど、最近はもう諦めてるみたいだった。
キレる十代、なんて言葉が流行ってた時期だ。
世間はどんどんあたしたちに寛容に、あるいは無関心になってきていた。
もちろん、デイジーみたいに規則を守らず浮ついている存在を見ると、必死にお題目を――常識を守って生きているふつうのひとたちは不安になる。
虐げ、仲間はずれにし、排除しようとする。
彼女は些細ないじめの標的になっているようだった。