【掌編】
□【掌編】十七話
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でも、何でわざわざ授業中に?
あたしは、むくむくと興味が湧いてきて。
「こ、こほんっ」
教師が威厳を取りつくろうとするように、咳払いをして。
「とにかく――授業を再開します、次の問題を亡々宮さん……。あれ、亡々宮さん?」
戸惑う教師の声を尻目に、あたしはこっそりと教室を横切って外にでていた。気配を消すのは得意だ。闇に人混みにまぎれ、その存在を一目から隠して行動する吸血鬼。
あたしは静かな、別次元のような授業中の学校の廊下を――何だか昂揚しながらも歩き、そのころは珍しかった携帯電話を取りだして。
「もしもし、チャラ男? 今どこにいる? あんたの廃車を乗り物として利用してやるから、感涙しながら五秒いないにうちの学校にきなさい――は? 時間外労働? うっさいわね、クビにするわよ?」
てきとうに脅して下僕を呼びつけてから、デイジーとちがって校庭を堂々と突っ切る度胸はなかったから、彼女とは逆側の人気のない方向へ。朽ち果てた、今は使われぬ施設群や電波塔なんかが並ぶジャングルみたいな景色を突っ切り、忘れ去られた校門へ。
このあたりは、むかし興味本位に探検したことがあったのだ。
廃墟とか廃プールなんてものがたくさん並んでいて、まったくもって無意味な土地だけど、撤去するにもお金がかかるからって立ち入り禁止にだけして放置されている。