【掌編】

□【掌編】十八話
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「まだまだ先のことだよ、受験なんて。来世のことだよ、一万年と二千年先だよぉ?」

「もう冬だし、今の段階で準備してないひとは遅すぎるぐらいだと思うけど」

 義務教育だったこれまでとちがって、高校受験からは自分の人生がおおきく変わりゆく瀬戸際になるのではないか――まぁ、まだ一年生の僕には想像もできないけど。
 すこし心配すらして言ってやったのだけど、誠はうるさそうに手を「ぴらぴら」とふって。

「まぁいいでしょ、決まりぃ♪ 軍辞くん紹介してよ、そしたらあたしも余計なことに気を回さず受験勉強に集中できるしぃ?」

 すこしだけ、彼女のにおいが強まる。
 上っ面は気っぷのいいお姉さんみたいに装っている彼女の、本質。暗くて淀んだものを隠している、その眼差し。

「どうも聞いた話、茄后美ちゃんもさ――その軍辞くんがつるんでる集団と接点があるみたいだしさぁ、あたしも負けたくないしぃ?」

「あぁ……」

 あくあの取り巻き、矢賀茄后美は近ごろ〈秘密結社〉の連中と仲がいいらしい。彼女があくあ以外とすごす時間が増えるなら、僕はあくあを独占できるから構わないというかむしろ応援したいぐらいなんだけど。
 誠は黒目がちの双眸を細めて、不気味に笑う。

「あたしはね、茄后美ちゃんにだけは抜け駆けされたくないんだぁ――あいつの持っているものは、ぜんぶ欲しいの。ね、いいでしょ? あんたは、あたしの味方でしょ?」

「僕の味方はあくあだけだ」

 やっぱりこいつ、僕のことを仲間だと思ってないか。妙な取り巻きどうしの勢力争いに巻きこまれたくないんだけど――。
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