【掌編】
□【掌編】十八話
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立ち入り禁止の場所だから、もちろん人気はない。苔むした歩道を囲うように背の高い金網が並んでおり、その向こうには倉庫や鉄塔が蔦植物に覆われている。エイリアンとかが徘徊する怪しい研究施設って感じだ――変な鳥の鳴き声もするし、不気味すぎる。
「ふぅん」
誠は鬱蒼と茂る植物の匂いが嬉しいのか、すこし上機嫌で足取りも軽い。
「アヤはいろんなことを知ってるなぁ」
「ふふん、あくあが関係することについてはね、誰よりも詳しい自負があるよ。誠なんか勝負にもならないね、僕がいちばんあくあを愛しているってことだ――わきゃっ!?」
足場が悪すぎて滑って転びかけた僕を、誠が慌てて支えてくれる。腕を掴み、自分のほうに抱きこんで、ついでに頭を「良い子、良い子」しながら。
「気をつけろよぉ? ろくに掃除もされてなさそうだし、このへん――転んで怪我でもしたらばい菌がすごそうだぞぉ?」
「わ、わかってるよ。今のはちょっと油断しただけだ、触るな」
「『わきゃ!?』って言ったよなぁ、いま――アヤはたまに可愛いなぁ♪」
楽しそうに密着してくるので、僕は首をふって振り払う。えぇい、暑苦しい。
「あんま調子こくなよ、殺すぞ。イカスミスパゲッティみたいな髪型のくせに」
「んな!? これはそういう髪型なの! お洒落なの! っていうか今のは酷いっ、不登校になるレベルだぞぉ!?」
喚く誠を置き去りぎみにすこし歩いて、ようやく辿りついた。