【掌編】
□【掌編】十八話
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「このへん――だよな」
僕は周りを見回す。
そこから奥にはもう何もないという、学校の敷地の最果て――頭上が樹々の梢で塞がれ暗鬱な雰囲気。あちこちに立つ鉄塔からは邪悪な電波が放射されているようにしか思えない、そんな気の滅入るようなところに〈アジト〉はあった。
見た目は、そこらへんに建っている倉庫と何も変わりがない。古びた、箱状の建物である。地下におおきな廃プールが広がっているらしく、水道管が破裂でもしているのか建物の前には溜め池ができていて、細い橋がかろうじて通されている。
そこで誰かが生活しているなどと説明されても信じないような、まるっきり廃墟だ。
無駄に鴉が飛び回り、赤ん坊の泣き声みたいに鳴いている。
「ほ、ほんとにここなのかぁ……?」
さすがの誠も怯んだのか、やや及び腰に。
「まるっきり、ホラーゲームの舞台みたいなんだけどぉ?」
「だいじょうぶ。もし怪物がでてきても、誠が食べられてるうちに僕は逃げ延びてみせる」
「そこは『誠だけは命にかえても僕が守る!』って言えよぉ、惚れてあげるから」
「おまえの愛情なんぞいらん」
などと踏みこむのが嫌で、しばし誠とどうでもいい話をしていると。
瞬間だった。