【掌編】
□【掌編】十八話
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「いきなり押しかけてきて、先輩だからって、偉そうですわ――何の権利があってそんな要求をするんですの? もう軍辞は野球部に関わりたくないんです、そうでしょう? それを無理やり引きずっていこうだなんて、言語道断ですわ!」
ついに堂々と抜刀し、白刃を木漏れ日に煌めかせて。
「〈秘密結社〉は憂鬱な中学生たちの互助組織――そこに逃げこんできた軍辞を、わたしは守る義務がありますの! だいたい、この付近は我々の〈アジト〉ですわ! 不法侵入者は斬り捨て御免しますわよ!」
待て待て。何でも暴力で解決しようとすんな。
と、僕がおろおろしたが、誠は小首を傾げて。
「さっきから気になってたけど、あんたは何なの――軍辞くんとどういう関係? もしかして、カノジョ?」
「なっ、なっ――かかかっ、ちがっ、わたしっ! ……殺すーっ!」
目をぐるぐるさせてとまとが傷害事件を起こそうとするので、さすがに目の前で人殺しをされては目覚めが悪い、と僕が彼女を後ろから抱きとめた。
羽交いじめにして、じたばた暴れるとまとに必死に呼びかける。
「落ちつけ、月吉っ」
「ちょっと文花さんっ、はなして! だってこいつ殺さなきゃ! せめて舌を、くだらないことを言う舌を切り取ってやりますのーっ! この侵略イカスミ頭! わたしたちの〈アジト〉からでていけ!」
「だ、だからこれはこういう髪型なの! これが可愛いの! あんたこそナポリタンみたいな髪型してるくせにぃ!」