【掌編】
□【掌編】十八話
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「勝負だ、軍辞くんとやら! 負けたほうが相手の言うことをひとつ聞く、それでいいだろぉ? あたしが勝ったら軍辞くんは野球部との話しあいの席につく、あたしが負けたらこの場からさっさと退散して二度と関わんないよ、脱げと言うなら脱ぐよぉ!」
べつに脱がんでいい。
というか、僕はどうでもいいことが気になって。
「おい誠、でも野球で勝負っていっても――一対一でどうやって勝敗をつけるんだ、バットもないみたいだし、キャッチボールぐらいしかできないだろ?」
野球詳しくないから知らないけど、バスケとかならやりようがあるだろうけど、団体球技である野球でどうやって一対一の勝負をするというんだ。
誠は考えてなかったのか、「どうしよう」という顔で僕を見てきた。見られても。
こいつやっぱり、馬鹿だろ。
「ふふん、まぁ何はともあれ――わかりやすく勝負をする、というのは宜しくてよ?」
僕と同じで部外者のはずのとまとが、なぜか食いついてきた。
当事者の軍辞は面倒そうなことに関わりたくない、という顔だけど……。
「伊達に放課後、いくつもの無駄な経験を積んできたわたしたちではありませんわ! 野球だろうと何だろうと、けして一般人なんぞに負けません! そうでしょ軍辞!?」
「え〜……?」
相方の反応がにぶいが、とまとは気にしていないようで、興奮しているらしく日本刀をぶんぶん振りまわしている。危ねえ。勝負事が好きなんだろうなぁ、迷惑だなぁ。
「ま、何でもいいよぉ」
誠はアバウトに応えた。