【掌編】
□【掌編】十八話
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僕は感心しつつ、やることはやった、とばかりに満足げに腕組みした誠を見る。
「そばに行って応援してやればいいじゃん、こんなとこから声かけなくても」
「やだよぉ、運動部って汗臭いし」
「じゃあ何でマネージャーなんかになったんだよ」
「男だらけの集団のなかで紅一点としてちやほやされたかったんだよぉ」
「動機が不純すぎる」
「香道部とかがあればそっちに入部したんだけどなぁ、うちの学校ってふつうの有名どころな部活動しかないし――野球部とかの、汗のにおいとかもやや遠い位置からたまぁに嗅ぎたくなるんだよなぁ」
自分の人生のすべてを嗅覚で決定してないか、こいつ。いいけど。
「選手の体調管理をしたりするのは楽しいしぃ――ふふふ、まぁ臭いけど……」
思いだしたように、誠はこちらに向き直って。
「そうそう、野球部といえばさ――それに関係することで、あんたに話がしたいんだった。だめだなぁ、あたし忘れっぽくて」
くねくねした髪の毛を自分でかき混ぜて、あまりやる気もなさそうに。