【掌編】

□【掌編】十八話
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「あんたの友達にさ、秦軍辞っているじゃない」

「はたぐんじ」

 誰だっけ、と一瞬思ったけど――あぁ、たしか〈秘密結社〉では珍しい、あの男の子だな。そういや、たしか元・野球部なんだっけか。

「べつに友達じゃないけど」

「あたしよりは親しいでしょ、あんたが前にその軍辞くんとやらと一悶着起こしたって知りあいに聞いたし」

 あれはとまとが暴走して僕を殺しかけたのを、軍辞のやつが止めてくれた、という状況だったのだけど。傍から見てれば僕らが三人で騒いでいたように捉えられたのかも。

「一年生の事情まで何で詳しくしってるんだよ、あんたの交友関係はどうなってるんだ」

「部活をしてると後輩にも知りあいが増えるもんさぁ、あんたも何かやれば? お友達すくない青春は寂しくない?」

「僕にはあくあがいればいい」

 意固地に言うと、誠は呆れたように目を細め、なぜか僕の頭を撫でてきた。何でだ。嫌がって首をふると、彼女はお手上げ、と肩をすくめて。

「それでさぁ、あたし野球部の後輩に頼まれたんだけどさぁ――ちょっと、その軍辞って子を紹介してくんない? 話したいことがあるんだけど?」

「秦軍辞に? 何で誠が?」

「いや、あたしはどうでもいいんだけど――まぁ、たいした用事じゃないんだわ。べつにその軍辞って子を野球部につれ戻したい、みたいなことじゃないし」

 優雅に足を組んで、むっちりと太股を強調すると。
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