【掌編】
□【掌編】十九話
11ページ/16ページ
「やるなぁ、軍辞くん――だっけ?」
無意味に男前に笑って。
「こっからが本番だ!」
「待て。おまえは今のでアウトだ」
さすがに僕がつっこむと、誠は「え〜」と不平そうにくちびるを尖らせる。
「いいじゃ〜ん、ちょっと油断してたけど、次はもっとうまくやるって! あと一機、あと一機だけやらして!」
「ドッジボールは残機制じゃないから」
などと無駄口を叩いているうちに、落下してきたボールが誠のもじゃもじゃ頭に直撃し、彼女は後ろ向きにバタンキュー。うわ、一回の攻撃で二回アウトになりやがった。
「だ、だいじょうぶか?」
目つき悪いせいで誤解されがちだが、実はけっこうお人好しかもしれない軍辞が、恐る恐る心配している。まぁ、手加減して投げたボールでここまでダメージを負うとは思わなかったのだろうけど。
誠、打ちどころが悪かったのか目を回しているしな。
僕はとりあえず、軍辞がアホに気を取られているうちに、こっそりと足下に転がってきたボールを拾った。そして、おろおろしている軍辞の尻のあたりに投げてぶつける。