【掌編】

□【掌編】十九話
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「やるなぁ、軍辞くん――だっけ?」

 無意味に男前に笑って。

「こっからが本番だ!」

「待て。おまえは今のでアウトだ」

 さすがに僕がつっこむと、誠は「え〜」と不平そうにくちびるを尖らせる。

「いいじゃ〜ん、ちょっと油断してたけど、次はもっとうまくやるって! あと一機、あと一機だけやらして!」

「ドッジボールは残機制じゃないから」

 などと無駄口を叩いているうちに、落下してきたボールが誠のもじゃもじゃ頭に直撃し、彼女は後ろ向きにバタンキュー。うわ、一回の攻撃で二回アウトになりやがった。

「だ、だいじょうぶか?」

 目つき悪いせいで誤解されがちだが、実はけっこうお人好しかもしれない軍辞が、恐る恐る心配している。まぁ、手加減して投げたボールでここまでダメージを負うとは思わなかったのだろうけど。

 誠、打ちどころが悪かったのか目を回しているしな。

 僕はとりあえず、軍辞がアホに気を取られているうちに、こっそりと足下に転がってきたボールを拾った。そして、おろおろしている軍辞の尻のあたりに投げてぶつける。
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