【掌編】
□【掌編】二十話
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冗談なのか本気なのかわからぬ口調で。
「ま、この旅行は〈秘密結社〉の面々にとっても有益なものになるはずだし――そう警戒していなくてもいいよ、楽しい旅行さ。表向きはね、うふふ」
「裏の事情もあるのかよ」
「ま、いつまでも狭い穴蔵で傷の舐めあいってのも不健全だしね――世界は広い、〈秘密結社〉の連中もたまには外に目を向けなくっちゃあ。若い時間は短いんだしね」
姉は表情を変えぬまま、やや声を低めて。
「私たちが失敗してしまった青春ってやつを、今の〈秘密結社〉のみんなには味わってほしいんだよ。これはほんとうに、心からね」
よくわからないことを言うと、一気にアクセルを踏んで。
「さぁ到着したよ、王路先生との愉快な地獄巡りツアーの始まりだっ♪」
不穏なことを語る姉の運転で、軍用ワゴンは坂上田村麻呂中学校に滑りこむ。
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