【掌編】

□【掌編】二十話
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 やけに敷地面積だけはだだっ広い、坂上田村麻呂中学校。

 あまり部活が盛んではないため、三連休はどこもオフらしく生徒の姿はなく、がらんとしていて物寂しい。

 砂漠を思わせる、何もない広大なグラウンド。からからと回転する、風力発電のプロペラ。墓標のような校舎の群れ。

 やや意外なことに、そこに一番乗りしていたのは――。

「やあ」

 こういう集団行動に最も適性がなさそうな、水無月あくあだった。今日も麗しく波打つ髪は光の加減で青ざめて見え、肌も透きとおりそうなほどに白い。少女的に華奢な身体にまとうのは、得体のしれぬアイドル衣装みたいな、あくあ以外なら絶対に普段着には選ばない格好だった。

 ぱっちりとした双眸を笑みのかたちに歪め、こちらに「ひらひら」と手をふっている。

 あくあ。

 あくあ……!

 僕はあくあの姿を視認した瞬間、いまだ動いていたワゴンの扉を全身で開き、思いっきり飛びだして地面をごろごろごろごろ――泥だらけになりながらも立ちあがり、夢中で駆け寄っていった。あくあ〜♪
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