【掌編】
□【掌編】二十話
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「ちょっ、文花ちゃん! 突発的にアクティブな行動するのやめてくれる!?」
姉の悲鳴とともに、僕の蛮行に運転が乱れてスピンしている背後のワゴンは無視し、とりあえず抱きついて愛情表現をしようとあくあに突進していったら――。
ぎゅむ。
と僕は、無造作に首根っこを掴まれた。
見あげると――あくあしか見えていなかったから僕は認識していなかったけど、外出するときはいつもあくあが腰かけている車椅子の後ろに、見慣れた仏頂面があった。
「ういっす」
あくあの取り巻きのひとり、驫木誠だった。
今日もどことなく男性的な日焼け肌。もじゃもじゃ鬱陶しい髪は頭の天辺で結び、おでこを丸だしにしている。もうけっこう肌寒い季節なのに、二の腕むきだしの見るだけで寒そうな格好だ。
手押し鞄をかたわらに起き、僕をおもむろに抱えこむと頭にぐりぐりと頬を寄せる謎のスキンシップをしてきた。
「ほんと、おまえはあくあを見たら一直線なんだなあ――動物みたいだなあ、か〜わいいっ♪」