【掌編】
□【掌編】二十話
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見てのとおり、うちではマンションの一室で四人家族が生活しているので、けっこう手狭だ。姉弟で二段ベッドだなんて、子供のころは何とも思わなかったけれど、今は何だか一人部屋が欲しい。というか姉が上段だと、寝てるうちに真上から邪悪な波動が滴り落ちてくる気がしてとても嫌だ。
眉をひそめていると、姉は欠伸を噛み殺しながら。
「よく眠れた? 今日は強行軍だからさ、たっぷり睡眠とってないと途中でばてちゃうよ――まぁ、移動中に寝てもいいけどさ」
「姉さんこそ、あんまり熟睡できなかったの?」
言いながら頭を屈めて、身を起こす。下段は狭く、あまり背が高くない僕でも下手すると頭をぶつける。
姉は目元をごしごし擦っているが、その開かれた両目は充血して真っ赤だ。目元に隈も浮かんでいて、どう見ても寝不足の態である。
「まあねえ、夢見が悪くて浅い眠りしかできなかったよ。旅行には嫌な思い出もあるしさ、運転中に眠っちゃわないかどうか心配だよ」