【掌編】

□【掌編】二十話
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「お〜い、こっちこっち。とりあえず合流して顔合わせといこうよ、〈秘密結社〉の諸君!」 その声に反応したのか、滑りの悪い窓が開かれ、見覚えのある顔がぴょこんとでてきた。真っ赤な三つ編みが揺れている。

 月吉とまとだ。

 お嬢さまらしく高級そうなふわふわもこもこの服を着ていて、何だか外国の絵本に登場する愛らしい乙女のようである。傍らにちゃっかり鞘に収められた日本刀があるあたり、絵本の登場人物には選ばれなさそうだけど。

 彼女は名前のとおりに顔を真っ赤にさせて、嬉しそうにしている。

「先生! 文花さんも! ご機嫌よう!」

 その勢いのままに滑りだしてきそうだったのを、何とか体勢を整えて座席に戻る。そんな彼女の周りには、いるわいるわ、〈秘密結社〉の面々が揃っている。

 僕が直接顔をあわせたものはあんまりいないが、資料で写真は確認しているから、見分けはつく。

 やたら、うずうずしてこっちを見ているとまとの横で、控えめな微笑を浮かべているのは憂奈木鞠和だ。長い前髪のせいでほとんど表情が読めず、車内の暗さに埋もれてふと気を抜くとそこにいるのを忘れそうである。
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