【掌編】

□【掌編】二十話
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「おい、姉さん」

 知らない話をされるのが落ちつかず、僕は歩み寄って声をかける。

「何の話をしてるんだ? っていうか、そのひと誰?」

「あぁ、文花ちゃんは初対面だっけ」

 疑りぶかい眼差しを向ける僕の頭に手を添えて、姉が微笑む。

「このひとは、〈秘密結社〉の一員、亡々宮美血留の――えぇっと、何? あんたの立場って何だっけ?」

「下僕でいいっすよ。名目上は運転手ですけど、近ごろお嬢は動かないんで実質仕事なくてニートですし。まぁ、俺のことは気にせずに、旅行を楽しんでくださいな」

「基本的に無害なひとだから、心配しなくていいよ。気軽に『チャラ男くん』と呼んで扱き使ってやればいい」

 姉が酷いことを言っているが、チャラ男て。名前すら不明のひとをそんな気軽に顎で使えないんだけど。

 けれどチャラ男と呼ばれた青年もまるで気にせずに、弛緩した笑みを浮かべている。あぁ、何だかよくわからないけど――こんな大人にだけはならないようにしよう、うん。
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