【掌編】
□【掌編】二十話
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僕は幸せいっぱいになりながらも、それを見送るしかなく――。
「く、くそっ、今回だけは特別だからね!」
捨て台詞を吐くと、仕方なくボロい車のほうへと向かった。体重をかけるだけで、車体がかるく揺れる。ほんと、だいじょうぶかこれ……。
思いながら、乗りこんで。
僕は、かるく怯む。
車内にいる〈秘密結社〉の面々の視線が、僕に集中したのだ。
ものすごく、アウェイにきちゃった気がするけど――。
「文花さん、こっちにおいでなさい。こっち♪」
とまとが手招きしてくれたが、彼女の隣の席は鞠和が埋めている。それを押しのけて座るほど恥知らずではなく、とまとのそばも疲れそうだったのでやや離れた位置に腰かけた。どっとくたびれて、重たい溜息をつく。
何だか前途多難のまま、得体のしれぬ旅行が始まってしまうのだ。