【掌編】

□【掌編】二十話
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 朝ご飯はカロリーメイトだった。わ〜い。

 食卓に並べられた黄色い箱を見て、僕はもはや楽しくなってきて脳内お花畑で戯れた。キャッキャ☆ウフフ。死にたい。あれ、姉さんさっき「オムライスの匂いがする」とか言ってなかったっけ……。寝惚けて願望が嗅覚を騙したのか。

 いやカロリーメイトが嫌いなわけじゃないけど、毎朝食べるとさすがに飽きるというか……。もっとこう、あったかいものが食べたい。愛とか。いやせめてお湯で溶かすインスタントなコーンスープに食パンをひたすとかその程度でいいから。

「…………」

 とりあえず食卓に腰かけ、長い髪を鬱陶しく思いながら櫛で梳いていると(寝癖が残ってると親がうるさいのである。髪切れよという話だけど)。

『何か言いたいことがあるなら言いたまえ、文花』

 僕の可愛らしい女の子みたいな名前を呼ぶ、合成音声が響いた。食卓のうえ。カロリーメイトの黄色い箱の向こうにノートPCが置かれていて、そこに開かれた画面が点滅すると同時に、渋い男の声を響かせる。
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