【掌編】

□【掌編】二十話
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 両親は食事の時間をもったいないと思うタイプの変態なので、彼らの生身はすでに会社に向かっており、ばりばり働きながら同時に家族の食卓もこなしている。今も、ツイッター画面のように下から上へずらずらと両親の同僚らしいものたちのコメントや意見が表示されては消えていき、なかには機密情報じゃないのかこれという危なそうな内容も混じっているので、僕は目を逸らす。

 いちいち部下に指示を飛ばしたり難しい専門用語を並べたりしながらも、両親は思いだしたようにこちらとも会話をこなす。聖徳太子が現代にいたらこんな感じだろうか。

 見知らぬ両親の会社の同僚たち(たいてい、オッサン)の顔がたくさん画面内に表示されるPCを眺めながら、もそもそとカロリーメイトを口につっこむ。いつもの、我が家の食卓である。

 姉などもはや面倒なのか、ダイニングにはおらずとなりのリビングでソファに腰かけ、だらしなくベーグルなんぞを食べている。Yシャツに下着だけの姿で、ワイドショーなんかを眺めながら。姉のように生きられたら楽なのだろうなあ。
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