【掌編】

□【掌編】一話
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「宿さんって……何で、あんなふうなんだ? 何かの病気なのか?」

「だから、詮索はよしなさいな。わたしも、他人に興味ないのでよく知りませんし」

「まぁ、そうだろうけど」

「気になるようなら、やどちん本人に尋ねればよろしくてよ? どうせ、応えちゃくれないでしょうけどね――おっと、噂をすれば本人ですわ」

 とまとの視線の先。

 元・屋内プールである〈アジト〉の入口。防火扉を開いて、宿が姿を見せた。
 相も変わらずふわふわ黄金色の髪の、フランス人形系。

 顔を見るたびに服装がちがう彼女だが、今日は作業着というか、おおきなポケットのついた泥だらけの作業服姿で、麦わら帽子をかぶっている。どことなく衣装は活動的だが動きは相変わらずゆったりしており、スロー再生されてるみたいだ。

「あら?」

 その姿を見て、とまとが小首を傾げる。
「やどちん、何を運んでるのかしら……?」

 彼女の疑問のとおりに、宿は両手に段ボールを抱えていて、非力らしくよたついて左右にふらふらしており、見るからに危なっかしい。
 軍辞は不安になって、傍らのとまとを眺める。
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