【掌編】
□【掌編】ニ話
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――こつんっ。
ときどき、鞠和の頭部にちぎった消しゴムや、ノートの紙切れがぶつけられる。
――きゃははは。
視線を向けると、女子のなかでも目立つグループの連中が、そんな小学生みたいな嫌がらせをしていた。鞠和は気にしていないようだが、見ていて楽しいものでもない。
だけど、ここで声を大にして「やめろよ!」と必死になって鞠和へのいじめを止めようとして、どうなるのだろう。何かが変わるのか。そんなちからが自分にあるのだろうか。
「どうした?」
近くにいた男の子が不審そうに見てきたので、軍辞は咄嗟に「ションベン」とつぶやいて、廊下へと向かった。その途中できゃっきゃと騒いでいる例の女子集団を一瞥したが、紙くずを投げようとした姿勢で軍辞の視線に気づいて「びくっ」と顔を引きつらせて、でもそれだけだ。
軍辞がいなくなれば、また再開される。
無力感がつのってくる。
麻呂中の広い廊下にでると、同じ制服を着た男女が忙しげに走り回っている。何かあったのだろうか。軍辞も気になってひとの流れを追いかけてみた。
冬なので、暖房のきいていない廊下にでると骨まで寒い。
両手をポケットにつっこみ、人垣ができているのを見つけて奥を覗きこみ、軍辞は唖然とする。