【掌編】

□【掌編】ニ話
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「きゃああああ!!」「何やってるの、これ!!」「先生呼んで先生!!」「またあいつか!!」「もう何で退学になんないのあいつ……ちがっ、あたしが言ったんじゃないです!!」などと、大騒ぎ。

 わりと普段は静かな麻呂中には、似合わない波乱の最中に。
 日本刀を手にした、月吉とまとが立っていた。
 その特徴的な真っ赤な三つ編みと、凶器。よく見るとその制服や顔面に返り血を浴びており、瞳は焦点を結んでいない。

 廊下には点々と鮮血が零れており、とまとの足下には顔面を手で押さえ、痛みに身悶えしている女生徒が転がっている。
 とまとが、この女の子に斬りつけた……?

「おい、月吉! おまえ何やってんだ!?」

 軍辞の背丈は中学生にしては高い。みんなの頭のうえから問うと、全員の視線がこっちに集まってきた。とまとは鬱陶しそうに袖で口元を拭うと。

「学校では話しかけないで」

 端的にそれだけ述べて、こちらに視線を向けもしない。
〈秘密結社〉の面々は、学校という日常の舞台では交流をもたない。そんな規則があるわけではないが、暗黙の了解である。
 もちろん、軍辞だって好きこのんでこんな危険人物と関わりたくはない。

 月吉とまと。
 麻呂中のクレイジートマト。

 校舎や備品を破壊すること数えきれず、起こした傷害事件は両手の指にも余るほど。どうしてそんな彼女が生徒会の役員のままでいられるのか、むしろ退学にならないのか不思議なぐらいである。
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