【掌編】
□【掌編】三話
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「ねぇ軍辞くん、お姉ちゃんとチュウをしませんか?」
「血の繋がった弟相手にいきなり何言ってやがる」
「だって暇なんですもの」
今日は珍しく〈秘密結社〉の面々が全員揃っている。
けれど宿はひとりで大作RPGに没頭しており、鞠和ととまとはひとつの雑誌をいっしょに読んで「この服とかどうですの?」「お金ないよ」「これとか可愛いですわ〜」「お金があればなぁ」と不毛なやりとりをしている。美血留はいつもどおり熟睡だ。
〈秘密結社〉はどこにも行き場のない憂鬱な中学生たちの溜まり場だが、部活や委員会のように特定の『やるべきこと』はない。とまとが言うには何か『目的』があるらしいのだが、いまだに教えてくれない。
よってみんなで集まっても、けっこう暇である。そもそも全員コミュニケーション能力が低いし、仲良く雑談しているだけで時間が潰せるわけでもない。軍辞も新入りだし、そんな〈秘密結社〉の現状に文句を言える筋合いはない。「退屈なのが嫌なら他の場所に行けば?」とか言われたらお終いである。
浴槽の壁にもたれかかり、宿の地味な経験値稼ぎを見ていたら、そんな軍辞にぴったり密着して単語帳をめくっていた哩音が(彼女は見た目からは意外だが、勉強家である)くちびるに指を当てて。