【掌編】
□【掌編】三話
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「怠惰な午後を刺激的に演出してみましょうよ? どうせ軍辞くんも暇でしょう?」
「暇だからってやって良いことと悪いことがあるんだよ、姉貴」
「若者の性は乱れてるんですよ」
「乱れてねぇ若者もいるよ!」
「もしかして軍辞くん……」
unbelievableという単語を示しつつ、哩音が目を丸くした。
「そんなに恥ずかしがるってことは、もしかしてキスしたことないんですか? くちびる童貞ですか? ほんとにお姉ちゃんの弟ですか?」
酷い言われようだった。
けれど軍辞はこの姉に馬鹿にされるのだけは我慢ならない。
「べ、べつに変じゃねぇだろ、俺たちまだ中学生なんだぞ? そんなん、経験してるやつのほうがおかしいって」
「えー……でもお姉ちゃんは幼稚園児のころに親友のお父さんとファーストキスを済ませちゃいましたよ? セカンドキスは家庭教師の大学生――」
「姉貴は特別なんだよ。特別に変でえろいんだよ」
「で、でも、週刊誌とかのアンケート見ると、みんなだいたい経験者って感じで!」
「そんなん鵜呑みにすんなよ、姉貴が読むような雑誌を読む層は特別な連中なんだよ」
「でもぉっ――」
哩音は不安そうに単語帳をぎゅっとすると、周りのみんなを見回した。