【掌編】

□【掌編】三話
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「じゃ、じゃあ、身近なみんなに聞いてみますから。恒例のアンケートをしちゃいますよ。えーっと、みんな注目!」

 ぱんぱん、と手を叩いて、彼女は〈秘密結社〉の面々に呼びかける。

〈秘密結社〉ではたまに、このように誰かが他のみんなにアンケートを募る。「〜をしたことはありますか?」みたいな。こないだの「手首を切ったことがありますか?」などが好例である。

 未経験のものがいれば、手取り足取り教える。誰もやったことがなくても、みんなで協力して、ちからをあわせて実行してみる。
 ひとりでは怖くてできないことでも、みんなで挑戦すればできるかもしれない。そうして、支えあい、導きあって、ひとつひとつ経験を積んでレベルアップしていくのだ。ネトゲみたいである。

 哩音が恐る恐る、同年代の女の子たちに問いかけた。

「このなかで、キスをしたことがあるひと〜?」

 そして率先して自ら手を挙げたが、他の面子の反応は胡乱だった。
 手を挙げたのは哩音だけである。眠りこけている美血留とこちらを認識できない宿はともかく、鞠和ととまと、そして軍辞は未経験。

「あっれえ!?」

 驚愕する哩音を、軍辞は鼻で笑った。

「ほら見ろ。変なのは姉貴のほうだってわかったろ?」

「嘘ぉ、ショックです――え? どうして?」

「『手首を切ったことがあるひと』だと俺以外の全員だったのにな」

 それこそ、偏りすぎている集団である。
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