【掌編】

□【掌編】四話
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 憂奈木デイジー。かなり可哀想な名前だが、何人だよって感じだが、それは彼女の両親に問題があることで彼女自身に罪はない。

だから、その変てこな名前をも、あたしは愛する。ぬいぐるみを持ち歩く不気味な趣味も、まったく愛想のないその喋りかたも、いつも『おあずけ』を食らったわんちゃんみたいな、その表情も。

 性別なんて関係ない。あたしはそのころ、デイジーのことをかなり真面目に愛していて、もちろん相手にもされていなかったのだけど、世界と彼女を天秤にかけたら容赦なく世界をゴミ箱に捨てるつもりだった。デイジー、デイジー、あたしのお姫様。

 手に入らないからこそ尊くて、手で触れられないからこそ『恋している自分』を楽しんでいられた。若かったのだ、大切なものはすぐ抱きよせておかないと、もろくも失われてしまうって――まだ知らなかった、中学生だった。

「そういう冗談じゃ、ねーんだよ」

 たまに口調が乱暴になるデイジーは、擦り寄っていくあたしを鬱陶しそうに「ぐいぐい」と押しのけて。
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