【掌編】

□【掌編】六話
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 学校はあんまり好きじゃない。

 でも行かなくては、みんなが大事にしている何か崇高なものから、弾かれる。零される。取り除かれる。そんな強迫観念に、若かったあたしは屈していた。

 そんな『あんまり好きじゃない』場所に、何年も、もしかしたら死ぬまで監禁されることになるなんて――当時はもちろん、想像してもいなかった。

「ななちゃん、ななちゃん」

 あたしを愉快な名前で呼ぶのは誰よ。

 坂上田村麻呂中学校、略して麻呂中の教室、その隅っこであたしは目だけをじろりと動かして周りを眺める。同年代の男女が花咲き、あるいは老人のようにくたびれて、ひとつのちいさな部屋のなかに押しこまれている異常な空間。

 この尋常ならざるストレスに耐えるために、子供たちは団結し、あるいは弱いものをいじめる。人間は集まればそういうふうになってしまう。それを理解させるために、改革もされずに放置されている政府が認めた戦場。

 あたしには権力があったし、他人に後遺症が残るぐらいの暴力を振るうことにためらいがなかった。だから恐れられ、結果として孤独になった。寂しくなかったとは言わない。だけど他人の行動に、生き様に従わされるのは、家のなかだけで充分だったから。
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