【掌編】

□【掌編】六話
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 怯えられ、遠巻きに噂されることを、喜んですらいた。

「また寝てるし」

 先ほどまで机に突っ伏していたあたしを見下ろしているのは、ごく平凡な、飾り気のない女の子。制服をきちんと着ており、眼鏡をつけていて、おでこをおおきくだした髪型をカチューシャでまとめている。姿勢がきちんとしていて、ロボットみたいだ。

 あまり瞬きをせず、くすくす笑う彼女を、わたしは面倒に思いながら。

「夜行性なのよ。朝は眠いの」

「かっこいい、雌のライオンって感じだし」

「食べちゃうぞぉ」

「性的な意味で!?」

 いやんいやん、と身をよじらせている。この女の子はあたしに声をかけてくる程度には変わった性格をしていて、名前は何だったか――。

 現代でも哩音などを見ていると思うのだけど、どうしてみんな同じ顔をして、雰囲気をまとおうとするのかしら。同じことを喋り、他人の発言には「うんうん」と肯定するか「すごぉい」と褒めることしかしない。

 何に怯えているのだろうか。

 どうしてみんな、出る杭を打つのだろうか。
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