【掌編】

□【掌編】八話
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 誰もが眠くなる、五時間目の授業中である。
 お昼ご飯をとって心身ともに満足し、うとうとしながら、あたしは目の前で拳を振りあげたプリン何とかさんを見る。

「はーい、ほんじゃ今日は修学旅行の班決めとかするからね! 異論は認めないし!」

 今日もおでこ丸だし+眼鏡をぴかぴかと、うざいぐらいに元気な女の子だ。彼女は根暗なあたしとちがって人望があるらしく、おまけに仕切り屋さんだから、自然とこのクラスの委員長になっていた。

 彼女は教壇に手をつき、この暑いのにクソ元気に言葉の弾丸をばらまき、ついでに物理的にプリントを配っている。
 プリントには、冬に行われる修学旅行の日程表や注意事項なんかがきちんとまとめられていた。

 ともあれ冬なんてまだまだ先だ、この蒸し暑い日本の教室(冷房なんてものはない!)でやれスキーだ、雪だなんだのと連呼されても現実感がなく、あたしたちはだれている。だいたい、何でこんなに早くから準備しなくちゃいけないのよ。

 誰もが下敷きで顔をあおぎ、カラフル。扇子の持ちこみは許可されてるので、あたしも烏の羽みたいな真っ黒なそれで全身にぬるい風を送っている。あたしは黒い色が好きだけど、熱を吸収しやすくてかるく死ねるわね。

 癒しを求めてちらりと窓際――最後列を眺めると、そこにあたしの最愛の女の子が座っている。机に突っ伏し、彼女の王国の住民、つまりぬいぐるみを枕にして眠っている。暴君ね。
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