【掌編】

□【掌編】九話
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 絶対に絶対に絶対に。
 ついてこないでね、見送りなんて要らない。お土産? 馬鹿じゃないの? などと最終的に相手の人格から家族構成にまで難癖つけてさんざん罵ったのに、結局、あたしはチャラ男のぼろぼろ車の後部座席で、『お嬢さま』らしく送り迎えされている。

 不機嫌でそっぽを向き、ふんふんふん〜♪ と運転席で鼻唄混じりのチャラ男の後頭部をべしばし叩く。

「ちょ、やめてくださいお嬢。事故りますから」

「『お嬢』はやめろと言ってるでしょうが。いいわよ事故ってやるわよ、あたしと一緒に死になさいよ。愛してるって言いなさいよ」

 げしげしと車体を蹴りつけるとチャラ男は「らめええ」と信じられない悲鳴をあげるので、あたしはひとまず溜飲をさげる。よっぽどこの走ってるのが不思議なぐらいの廃車寸前が大事なのか、チャラ男は情けなくも肩を丸めてしくしく泣いている。

 やがて辿りついたのは、商店街である。うちの中学校がある町にはふたつ発展した場所があるけど、ひとつは駅前、もうひとつがここだ。駅前はしょぼいので有名だから、うちの町で買い物を済ますならここにくるしかない。

 というわけで、今日は休日だし――町中の暇な連中が集まってうろついている。車では入っていけそうにないけど、チャラ男は行けるところまで行くつもりらしく、ときおり情けない「ぷあーん」というクラクションを鳴らして通行人を威嚇している。
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