【掌編】
□【掌編】十話
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ともあれ冬だ、こんなところで寝ていたら風邪をひく。軍辞は廃プールからかけ布団やらクッションやらをもってきて、美血留を起こさないよう苦労して寝床をセッティングする。頭をかるくあげて、クッションを枕に。彼女が抱いている犬ごと、布団をかけてようとして。
ふと、好奇心がわいてきた。
今なら、何をしても起きないかもしれない。
「…………」
軍辞は周囲をきょろきょろ見回し、人目がないのを確かめてから。
そっと手をさしのべる。折り悪く美血留が「ん……」と艶めかしく寝返りを打ったのでびくっとしたが、起きてはいないみたいだ。
「実は、前から興味があったんだよな」
ちいさく独りごちて、再び指先をのばす。寝返りをうった拍子に仰向けになった美血留の顔が、その体温が近づいていく。
息が荒くなりそうなのを堪えて、慎重に……。
触れる。
「おお」
軍辞は感動した。
そっと撫でる。心地いい手触り。
「へえ、こんな感触なんだ……」
大胆に、もにゅもにゅと揉みしだく。
「起きてるときは、とてもこんなことできないからな――うわ、すっげえ柔らかい……」
などと、しばし堪能した。