【掌編】
□【掌編】十一話
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さりげなく。
「そういえば、美血留さんって憂奈木とむかしから知りあいみたいな感じっすけど」
「ええ、そこそこ長い付きあいになるかしら」
美血留は長くて骨っぽい足を丸めて、膝の頭に自分の頬をのせると。
「それこそ、中学生ぐらいからの知りあいかしら――あたしね、あの子の姉と友達だったのよ。鞠和とは、その繋がりでたまに会ったときに喋るようになって、親しくなったの」
鞠和の姉。それは以前、美血留がばらばらに引き裂いた写真にのっていた、あの片目を隠した少女のことだろうか――と、軍辞は推測する。
「あの、そのお姉さんって」
今どうしてるんですか、と尋ねたかったが、美血留は「…………」と酷く身体ぜんたいをちいさくして、無言。それは、秘密めかしてこちらに意地悪してるというより、哀しくて痛くて、どうしても語ることができないようだった。
「ごめんね」
つぶやいて、美血留は肩越しにこちらを見あげてきた。
「今は、まだ……ちょっと、無理みたい。我ながら、情けないけど。それ以外のことなら、何でも教えてあげるわよ。あたしの好みのタイプとか」
「いやそんなん教えられても痛たたたたっ!!?」
何が気に食わないのか、美血留に太股をつねられた。
彼女はくちびるを尖らせて。
「ていうか、むしろ軍辞くんの好みが聞きたいわ――周りが女の子だらけなのに、あんまりそういうの態度にださないし。ねえ、〈秘密結社〉では誰がいちばん好きなの? やっぱり鞠和? とまっちゃんかしら? 大穴であたし?」
「いや、そんなこと聞かれても」
軍辞はわりと真剣に悩んでから、自分の気持ちがわからず、まだ中学生なのだ――もやもやしただけで、溜息をついた。