【掌編】

□【掌編】十二話
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 何でこんな事態に……。

 近ごろ流されやすいなぁと自分を戒めつつ、軍辞はけれど抵抗することなく、おとなしく憂奈木鞠和に膝枕&耳かきをされていたりした。
 今日は珍しく、彼女とふたりっきりだ。

 美血留は定期検診だとかで、『チャラ男』とか呼ばれてた線が細い男のひとにぶうぶう文句垂れたりローキックしたりしながらつれていかれた。まぁ、その態度はどうも美血留の親愛の証のようで、ふだんは〈秘密結社〉の最年長として君臨している『ボイラー室の吸血鬼』の子供っぽい態度に軍辞は驚いたりもしたけれど。
 バイトが休みとかでお留守番を頼まれた鞠和と、ふたりで並んで廃プールの底に座っていたら、鞠和がじぃっと長い前髪の隙間からずっとこちらを凝視しており――。

「何だよ?」と我慢できずに問いかけると「軍ちゃん、耳掃除してあげよっか?」といつもの小声で尋ねられ、どこからともなく耳かきを取りだしてきて今に至る。この〈アジト〉、生活用品ならたいがいある。

「えへへ……」

 鞠和はどうもきれい好きのようで、いや他に理由でもあるのかもしれないが、丹念に指先を動かしながらも至福の表情だ。そのちからは弱々しいほどで、けして痛みを感じないぐらい優しく、くすぐったい。
 軍辞は同年代の女の子の膝の、独特の柔らかさと骨っぽさの中間と、体温を感じながら――こんなところ誰かに見られたら死ぬなあ、とくに姉貴とかには絶対見られたくないなあ、と思春期な気恥ずかしさで思っていた。
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