【掌編】

□【掌編】十三話
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 その日、最初にその『恐ろしい生物』を目撃したのは――月吉とまとだった。
『血まみれトマト』『喧嘩番長』『校内限定通り魔』などと無数の二つ名をもつ麻呂中最凶と謳われる人物で、彼女はクラスメイトからも恐れられ、距離を置かれていた。

 教室のいちばん後ろの席で、たいせつそうにサンドイッチをもぐもぐしていた彼女を、周りのものたちは遠巻きにしている。とまとはそれを哀しいとも思わない、むしろ怯えられることにほのかな満足感すらおぼえている。
 客観的に見れば、単純にクラスの雰囲気に馴染めてないだけなのだけど。
 それを理解しちゃうと悔しいから、とまとは今日もふんぞりかえり、寂しくなんてないんだからという仏頂面で周りを見据えている。

「ふ、あ、あ」

 昼食を追え、食べ終えたランチボックスを閉じると、とまとは大口をあけて欠伸をする。目元を擦り、どこか日当たりのいいところで昼寝でもしようかなと、窓の外を眺めたのがいけなかった。

「うげ」

 硬直したとまとを、同じく教室の隅っこに独りぽつんといた少女が「どうしたの、つっきー?」と声をかけてくる。
 矢賀茄后美である。

 とある一件からとまとたち〈秘密結社〉の面々と関わるようになった、派手な見た目の少女だ。制服を着崩し、夏でも長袖で、暑いような寒いような見た目だ。頭の片側で髪の毛をまとめていて、本人は『ゆるふわサイドテール』と呼んでいる、どうでもいい。
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