【掌編】
□【掌編】十三話
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その事態に誰ひとり反応できないなか、茄后美が呑気にぽてぽてと歩いて「うわ、ロッカーに入れるんだ、つっき――ちっちゃいからなぁ♪」と楽しそうに写メっている。
がたがたとロッカーが揺れ、なかから甲高い声。
「う、うるさい! 話しかけるな、ここにいるのがヤツにばれちゃうでしょぉ! あいつはマジヤバいのですわ! こ、ここ、殺され……!」
「犬が苦手なの、つっきー? 可愛いなぁ♪」
「うるさい、可愛いとか言うなボケ女! わたしはここにはいませんの! 犬がどっか行くまで断固として引きこもりますから!」
狭苦しい空間で叫んでいるとまとのポケットに、着信。もしかして軍辞かしら、ととまとが状況を忘れて期待しながら画面を覗きこむと、そこには。
『〈秘密結社〉各位様へ』
すごい勢いで頭をさげている、長い黒髪の女性――亡々宮美血留が「ごめんね☆」とイイ笑顔で両手をあわせている画像と。
『マジごめん、マーキュリーが行方不明なの。あたし〈アジト〉から出られないし、どっかで見かけたら保護して、できれば〈アジト〉までつれてきてね♪』
「飼い犬には首輪ぐらいちゃんとつけてなさいよ吸血鬼ぃいいいい!!」
とまとの絶叫にロッカーが震え、周りの生徒たちが「びくう!?」と後ずさった。
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