【掌編】
□【掌編】十四話
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その日、秦軍辞がふつうに授業を受けていると。
携帯電話にメールが届いた。
見ると『差出人*姉貴』とある。
「またかよ……」
姉とは諸事情あって別居状態だが、寂しんぼなのか筆まめなのか、しょっちゅうメールをしてくるので遠ざかった感じはしない。お互いに〈秘密結社〉の一員となった今では尚更だ。
授業中だし無視しようかとも思ったが、気になって落ちつかず、軍辞はこっそり机の下でメール内容を確認してみる。
『身体がうずくの。すごくエッチな気分――軍辞くん、慰めて♪♪(^^)/』
携帯電話を閉じ、何だいつものたわごとか、と溜息をついて授業に戻ると。
またメールが届いた。
『くすん、軍辞くんがお姉ちゃんを無視する。これはネグレクトですよ、奥さん! 軍辞くんの鬼畜系男子、くすんくすん。でもね、りお姉はそんな軍辞くんのことをパンツのなかにいれても痛くないほど大好きですよ☆』
それも黙殺して数学の問題を淡々と解いていると、しつこくメールが届く。
『軍辞くん、何でお返事くれないの。りお姉はさびしいと死んじゃうんですよ。むかしはお姉ちゃんの着替えをうっかり見ちゃっただけで熱をだして一日中うんうん唸ってた可愛い子だったのに。このまま何の反応もないとお姉ちゃんはそんな軍辞くんの面白エピソードを大声で叫ばざるを得ないですよ』
やんわり脅してきたので、軍辞は鬱陶しく思いながら。