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□消せない跡
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いくら拭っても溢れる涙。
ユキはベッドの上で肩を震わせていた。
くしゃくしゃになったシーツが生々しい。

『ずっと前から貴女を愛してた』

諒祈から突然の告白。
身体を組み敷かれ、無理矢理キス。
その後は―――。

思い出したくない。
ユキは首を振った。
とにかく身体を洗いたい。
諒祈の唇や腕の感触が残っていた。
ルカが戻ってくる前に、早く。

乱れた髪を直しながら立ち上がった。

ドアノブに手をかけると同時に、扉が開いた。

「ユキ……?」

シャワーを済ませたルカがそこにいた。

「どうした?」

黙って俯いていると、心配そうな声がした。

今すぐ抱きついて泣いてしまいたかった。
でも。
泣きはらした顔。
他の男の痕がある身体。
汚い姿。
こんな姿見られたくない。


目も合わせずに部屋を出た。

「ユキ!?」

走って逃げるつもりだったのに腕を掴まれて。

「何があった?」

振りほどけなかった。
細くて白い指先で髪を撫でてきた。
ルカはいつも優しい。
だから余計に辛くなる。
他の男に汚された事実。

「ごめんね、ルカ。私あなたと幸せになれない……」

「どうして?」

「なる資格ないよ……」

ルカの胸に抱きよせられた瞬間、再び大粒の涙がこぼれた。

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