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□行き止まり
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「あんたが性別を変えて生まれ変わったのは―――やっぱり俺のせいなのか……?」

斎悧はどうしても聞きたかった。
無理矢理ユキを手に入れた後、ずっと罪悪感が消えずにいた。
次に会ったとき彼女に謝罪するつもりでいた。

そのまま戦いに突入し、二度と再会することもなく転生してしまったのだが。

今からでも謝りたい。
そう思っていた。

「え……」

何のことやらわからず戸惑う夕月。

“あさぎ”

再会した瞬間、夕月は無意識に自分の名前を口にしていた。微かに記憶が残っているのかもしれないと思った。

「あの……すみません僕、何も覚えてなくて……」

それだけ彼女にとって忘れたい記憶だったのか。それとも記憶にも残らないようなちっぽけな出来事だったのか。

どちらにしても、あのときの彼女はもういない。

目の前にいるのは夕月という名の少年だ。

「……そうだったな……。悪い忘れてくれ」

斎悧は転生してもユキへの気持ちを引き摺っていた。
あのときの言葉は嘘じゃない。
それほどまでに彼女を愛していた。
例え男に生まれ変わっていても、気持ちが変わらなかった。

「斎悧さん?」

無防備に開かれる唇。
誘われるように指先で触れた。

「ユキ……」

そのまま顔を近づけて思わず唇を押し付けそうになった。
罪を再び犯す訳にはいかない。
瞬間、ユキの泣き顔が頭の中にフラッシュバックしてぐっと堪えた。
もう彼女を泣かせたくない。

「行くぞ」

何もなかったように歩き出す斎悧。

「あ、はい」

不思議そうな顔をして夕月が後を追う。


この恋は完全に行き止まり。
そう感じた雨上がり。

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