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□ご主人様の浮気
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黙って俺の言うことをきけ。
おまえは俺のモン。
他の奴の話すんな。
俺だけ見てろ。

散々そう言っていたのに。

夕月はベッドの上でため息を洩らす。
恋人同士になって数ヶ月経った頃、焔椎真は突然夕月の部屋に来なくなった。

やりたいゲームがあるから、疲れてるから、愁生と話があるから。
色々理由は聞いたけれど。
それでもまだ期待してしまう。
もうすぐ「一緒に寝よーぜ」と彼が部屋に顔を出すかもしれない。

ベッドの上でひたすら待つ。
今夜は来てくれますように。

時計の針が1時を指す。
どうやら、今夜もひとりで眠ることになりそうだ。

(飽きたのかな……僕のこと)

神の光はツヴァイルトにとって特別だとは言うけれど。
夕月は普通の男であり。
案外手に入れたらこんなモンか、とがっかりされてもおかしくない。

(今頃愁生くんと一緒に寝てるのかな)

考えれば考える程落ち込んできて、俯いた。
手元にあった白い革製の首輪を握り締める。

毎晩のように身体を繋げていた頃。
嫌だと言うのに無理矢理首にはめられた。
ご主人様と呼べと強要され。
何度も後ろから挿れられて。
何度も中に出された。
身体中にキスマークをつけられた。
あの夜が強烈で忘れられない。

どうか。
どうか。
帰ってきて。
僕と繋がっていて下さい。

「ご主人様……」

俯せになり、枕に顔を埋めシーツを握り締める。
頬を涙が伝った。

「おい」

顔を上げる。
まさか、と思ったが目の前に焔椎真がいた。

「え、何。泣いてんの?おまえ。どうした?」

「ご主人、さま……」

「そのプレイ気に入ったのか?首輪までつけて」

フッと笑う。
夕月の細い首に巻かれているそれを、指先でなぞった。

「焔椎真くんっ」

「わっ」

勢いよく抱きついたせいで、焔椎真をベッドに押し倒す形になってしまった。

「すみません」

「いい」

頭を抱き寄せられたと思ったら唇が重なった。
すぐに舌が入ってくる。
静かな部屋にキスの音が響いた。

「好きです……焔椎真くん」

「俺も愛してる」

「離さないで下さい」

「離さねぇよ」

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